ものを減らす時の基本スタンスは、現在(今)の自分が「使うもの・好きなもの」だけを残すことです。
現在の自分に必要なら残し、必要ないなら手放します。年に1回くらい使うもの、思い出の品、どうしても迷うものなど、基本スタンスで区別できないものには、それぞれ別の対処法があります。
捨てるものではなく、残すものを選ぶ
整理するときに選ぶべきなのは、「捨てるものではなく、残すもの」。
「整理収納レッスン② 整理収納の目的を決める」では、取りかかる前に「どうなりたいのか」「何を解決したいのか」をしっかり考えることの大切さをお伝えしました。
この整理収納が終わったら自分はどんな暮らしをしていたいのかをイメージし、理想の暮らしにふさわしいものを選んで残すようにしましょう。
「もの」ではなく「自分」を主語に考える
「もの」ではなく、「自分」を主語に考えて、自分に必要なら残し、自分に必要ないなら手放します。
「捨てるのはもったいない」「かわいそう」という感情は、ものが主語になっています。しかし、その「もったいない」「かわいそう」は誰に対するものでしょうか?
耳が痛い言葉かもしれませんが、ものを主語にするのは自己満足でしかありません。高かったからという理由で流行遅れのもう着ないスーツを取っておいても、購入した費用が戻ってくることはなく、ただ場所を取るだけです。
理想の暮らしを実現するためにものを減らそうとするなら、「もの」ではなく、「自分」を主語に考えましょう。シンプルに、自分に必要なら置いておき、自分に必要ないなら手放すようにします。
ものの取捨選択の自由は自分の手にある、と考えましょう!
「もの」ではなく「自分」を主語にする考え方のポイントは以下の通りです。
- 自分が「使うもの・好きなもの」を選ぶ
- ものは「使うため」にある
- 1年以上使っていないものは手放す
ひとつずつ順番に見ていきましょう。
自分が「使っているもの・好きなもの」を選ぶ
ものが「使えるか・使えないか」という基準(もの軸)で考えず、自分が使っているもの・好きなもの(自分軸)で選ぶことが大切です。
先ほど例に挙げた「流行遅れの高かったスーツ」は、着ようと思えばまだ着られるでしょう。
でも、もうずっと着ていなくて、特に好きだと思えないのであれば、「使っているもの」でも「好きなもの」にも合致しません。従って、手放したほうがよいのがわかります。
新しい服でも「素敵だと思って買ったけれど、自分に似合わなかった」という理由で着ていないなら、手放すべきです。今これが売られていたら買うかな?と自分に問いかけてみると、好きかどうかが分かりますよ。
ものは「使うため」にある
ものは使ってこそ価値があります。あなたが好きではなくて使っていないものは、劣化しないうちに使ってくれる人のもとに届けましょう。
知人に譲ったり、フリマアプリに出したり、リサイクルショップに持ち込んだりすれば、ものは別のところで活きるので、「もったいない」と感じずに済みます。
1年以上使っていないものは手放す
1年以上使っていないものは、今後も使わない可能性が高いです。
「前回使ったのはいつか」「なぜ使わずにいるのか」を考えると、「デザインは好きだけど素材が苦手」「わが家では使うシーンがない」といった理由が見えてきて、手放しやすくなります。
いただきものの高級な塗りの器、素敵だけど、洗い物は食洗機で済ませたいわが家では今後も出番がなさそう。
「今」「過去」「未来」で考える
ここまで「もの」ではなく「自分」を主語に考えることを説明してきましたが、ものを減らすときのもう一つの判断基準になるのが「時間軸」です。すなわち、「今」「過去」「未来」のこと。
「今使っているもの」「今必要なもの」は、そもそも捨てようとは思いませんよね。
しかし、時間の経過とともに自分とものの関係性は変わってきます。「過去の自分には必要だったけれど、今の自分には必要ない」と思えたら、それが手放すタイミングです。
チャイルドシートは過去の私には必要だったけど、子どもが大きくなった今は使っていなくて、必要もないな。
捨てられないものは、過去のものか未来のもの
「今使っているわけではないのに捨てられないもの」は、「過去のもの」か「未来のためのもの」のどちらかです。
過去のもの
「過去のもの」は、例えば次のようなものです。
- 昔買ったスーツやバッグ
- 人からもらった記念品やプレゼント
- 過去にがんばっていた資格試験や語学習得のための教材
- 昔もらった手紙やカード、子どもの作品など思い出の品
昔お金を貯めて買ったブランドもののスーツ、もう着ることはないけれど、捨てるとがんばっていた自分がなくなっちゃうみたいでさみしい……
単なる「もの」ではなく、「もの+思い出」になっていると、捨てるのをためらいますよね。ここでは、「過去のもの」との上手な向き合い方を紹介します。
思い出の品は無理に捨てなくてもいい
思い出の品は、今の生活空間を圧迫しないのなら、無理に捨てる必要はありません。
とはいえ、「いま(毎日の暮らしで)使うもの」ではないので、分けて保管するのがベターです。具体的には押し入れの奥や、出し入れのしにくい高い場所などにしまっておくとよいでしょう。
しかし、もし「思い出の品が多すぎて、減らしたいけれどどうすればいいかわからない」と悩んでいるなら、「もの」と「記憶」を分けて考えると、手放しやすくなります。
「もの」と「記憶」を分ける
思い出の品が多すぎて減らしたいと思っているなら、「もの」と「記憶」を分けて考えましょう。
残したいのは、その「もの」ではなく、「そのときの気持ち」ですよね。ものがなくなっても、そのときの思い出や経験はちゃんと残ると考えましょう。
プレゼントはもらった時に役目を終えている
プレゼントは気持ちを届けるものです。つまり、相手の気持ちが届いた時点(=もらったとき)でその役目は終わっています。
高価なものであっても、手作り品であっても、手渡されたときに「私のために選んで/作ってくれてありがとう、嬉しい!」と思えば、しっかり気持ちは受け取っているのです。
気持ちを受け取ったあとに手元に残るのは、ただの「もの」。自分が好きなら使えば良いですし、好きじゃなかったら手放せば良いのです。ものではなく、自分を主語に考えましょう。
写真に撮って残しておく
「昔お金を貯めて買ったブランドもののスーツ」は、それを着てがんばっていた頃の思い出を大切にしたいなら、現物を取っておくのではなく、写真に撮って残しておくようにします。
子どもの作品(絵や工作など)は、もの単体より、子どもと一緒に写真を撮るのがおすすめです。あとから「このくらい(年齢)のときの作品なんだね」と懐かしく思い出せます。
未来のもの
「未来のためのもの」は、例えば次のようなものです。
- 当面使う予定はないけれど、捨てたら困るかもしれないもの
- いつか○○になったら使いたいもの(痩せたら着たい服など)
- 時間ができたら読みたいと思って買った本
いつか使うもの、いざというときにないと困りそうなもの、食品や日用品のストックなど、「未来の自分が必要とするはずもの」を捨てるのは、不安な気持ちになってしまいますよね。
具体的に「いつ使うか」が決まっているものだけ残す
「3か月後の結婚式にこのワンピースを着る」「夏休みにこのスーツケースを持って旅行をする」など、具体的に「いつ使うか」が決まっているものは、捨てずに残します。
しかし、「いつ」が具体的に言えないものは手放しても大丈夫です。
長いこと海外旅行に行っていなくて、この先も(子育てや介護で)いつ行けるかわからないなら、大きなスーツケースを残しておく必要はありません。
「いつか使うもの」は使わない
「いつか使うかもしれない」と思っておいたものが、実際に使われることはほぼないでしょう。「いつか使うかも」と取っておいた多くのものは、たいていその存在を忘れてしまうからです。
数十個に1個は、「捨てずに取っておいてよかった!」というものがあるかもしれません。
しかし、そのために数十個のものを全部残しておいて、生活空間が圧迫されているのだとしたら、「未来への漠然とした不安」のために「今の暮らし」が損なわれていることになります。
使わないものが収納スペースにあり、使うものが出しっぱなしになっているのは本末転倒です。
「いつか着る服」はもう着ない
昔痩せていたころに着ていた服、今は入らないけれど、また痩せたら着たい…と思っているなら、期間を決めて取っておきます。飾ってダイエットのモチベーションにするのもよいでしょう。
しかし、期間を決められないなら、「いつか着る服」を着る日はやってこない可能性が高いです。
それでも悩む服は、実際に一度着てみると「今の自分には似合わない」と納得できて手放せることもあります。「痩せたらそのときの自分に似合う新しい服を買う」と決めるのもいいですね。
「いつか読み返す本」は心に残った部分を書き出す
「いつか読み返すかもしれない」と取ってある本が山積みになっているなら、心に残った部分だけをノートに書きだして、本そのものは手放しても良いかもしれません。
話題になっているからと買ってはみたものの「積ん読」になっている本や、「いつかまた必要になるかも」と取ってある資格試験のテキストも、その「いつか」はやってこない可能性が高いです。
厳選したお気に入りの本を「過去のもの(思い出)」として残しておくのはこの限りではありません。
代わりになるものを探す
「これを捨ててしまったら、いざというときに困るかも」と不安なら、その「いざというとき」に今使っているもの(捨てないもの)の中で代わりになるものがないか探してみましょう。
例えば、子どもが部活をしていたときに出番の多かったキャリー付きの大きなクーラーボックス。もう使うことはないけれど、「冷蔵庫が壊れたときに保冷ケースとして使えるかも」と思うと捨てられない、という場合があります。
そんなとき、折りたためるソフト保冷ケースがクーラーボックスの代わりになるとわかれば、クーラーボックスを捨てられるのではないでしょうか。
「これがあれば代わりになる」と思えて不安が解消できると、ものを手放しやすくなります。
ストック品は量を決める
洗剤やトイレットペーパーなど、近い未来に使うことが明らかなストック品は必要ですが、使いきれないくらいのストックがあっても仕方がありません。
・数を決める(プラス1個)
・体積を決める(この箱に入るだけ)
……と、必要な数を最初に決めて、それ以上増やさないのがストック品の上手な管理方法です。
それでも迷うときは、しばらく寝かせる
以上が、残すもの・処分するものを決めるときの考え方です。
まとめると、「今使っているもの」「思い出となる過去のもの(一定量)」「確実に使うことがわかっている未来のもの」が残すもので、それ以外は処分するもの、となります。
それでも、迷ってしまうものがあれば、今、無理に判断しなくても構いません。
時間を置くと冷静に判断できるようになることもあるので、迷うものだけ集めて、別の場所に保管しておくと良いでしょう。
大切なのは、家中のものを一つ残らず「いる」「いらない」と分類することではなく、今の暮らしが快適になること。ものを減らすことは目的ではなく、あくまでも手段なのです。
ものを減らし、使うものだけ残したけれど、まだものが多くて困っているなら、さらに減らす方法があります。それは、専用品を持たないこと。詳しくは続きの記事で解説します。
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