ナチュラルクリーニング講師・本橋ひろえさんの『ナチュラルおせんたく大全』は、肌にも環境にもやさしい天然の界面活性剤である石けんを主役に、重曹・過炭酸ナトリウム・クエン酸を使った、ナチュラルおせんたくのやり方を紹介する本です。
「過去に石けん洗濯をしてみたけれど、汚れが落ちなかった」
「黒ずんだり、黄ばんだり、きれいにならないイメージ」
「石けん洗濯を始めてみたい。でも、失敗したくない」
そんな人も心配いりません。全223ページのボリュームの本書を読めば、失敗なくきれいに洗い上げるための注意点やコツがしっかり身に付きます。
【要約】ナチュラルおせんたく大全
ナチュラルおせんたくとは、合成洗剤をいっさい使わず、石けんと重曹・過炭酸ナトリウム・クエン酸を使う洗濯方法のこと。
著者の本橋ひろえさんは、大学時代に化学を専攻し、卒業後は化学薬品を作る会社で合成洗剤の製造を担当していたそうです。ナチュラルおせんたくとは真逆なイメージで、意外ですよね。
しかし、本橋さんは肌が弱く、デリケートな肌に直接触れる衣類を、できるだけ刺激の少ない洗剤で洗い上げたいと願う気持ちから、合成洗剤を使うのをやめ、石けん洗濯を始めたそうです。
しかし、石けん洗濯には、失敗もあります。例えば、洗濯物が黄ばむ、黒ずむ、ベタつく、石けんカスが白く残る、などなど。最初にお湯でめいっぱい泡立てればきれいに洗い上がりますが、毎日のこととなると大変です。かといって、合成洗剤には戻りたくない……。
本橋さんが出した結論は、ナチュラルおせんたくには肌にも環境にもやさしい天然の界面活性剤である石けんが一番! しかし、石けんだけを使うのではなく、ナチュラルクリーニングでおなじみの「重曹」「過炭酸ナトリウム」「クエン酸」を仲間として使うことでした。
- 重曹…石けんを助ける働き者。水質をアルカリ制にして、石けんをあぶらに戻さない。
- 過炭酸ナトリウム…菌もカビもパワフルに退治! しみ抜きだってお手のもの。
- クエン酸…アルカリ汚れに強いから、石けんカスを残さない。洗濯槽のカビ予防にも。
この本が特徴的なのは、洗剤を擬人化して、魅力的なキャラクターにしていること。石けん王子やほかのキャラたちの会話を通して、それぞれの特性や関係性をスムーズに理解できます。
絵もきれいで、マンガもあるからすごく読みやすいですよ!
この本の構成は以下の通り。
- はじめに
- ナチュラルおせんたく 基礎知識編
- ナチュラルおせんたく 実践編
- ナチュラルおせんたく 上級編
- おわりに
- ナチュラルおせんたく 目安の洗剤リスト
ナチュラルおせんたく 基礎知識編では、「汚れとは?」「洗濯機の誤解」「ナチュラル洗剤(重曹・過炭酸ナトリウム・クエン酸)」、「洗剤と水の量」などがわかりやすく書かれています。
ひと口に洗濯物の汚れといっても、その種類はさまざま。食べこぼしや襟・袖口の黒ずみ、汗や皮脂など繊維にしみ込んだ汚れ、雑菌と、汚れの種類によって落とし方は異なります。
ナチュラルおせんたく 実践編では、「基本編」「ドラム式編」「お湯取り編」に分けて、具体的な洗濯の仕方を解説。大量の汗は先に水洗いする、襟・脇・袖口は固形石けんで部分洗いする。つけおき中の衣類は完全に水没させる、などの成功のコツも満載です。
ナチュラルおせんたく 上級編では、「お気に入りの服を大切に着続けるために」「繊維の特性を知ってどう洗うかを自己判断(綿・麻・毛・絹・レーヨン・ナイロン・アクリル/ポリウレタン・ポリエステル)」、「おしゃれ着洗いの鉄則」などが書かれています。
シミ抜きに関してもかなりのページを割いてあるので、困ったときに頼りになりそうです。
『ナチュラルおせんたく大全』というだけあって、手元にあればわからないことがあるたびに見返せそう!
化学の目で見た、論理的な思考に基づいた洗濯
『ナチュラルおせんたく大全』では、石けんを主役に、重曹と過炭酸ナトリウムを助剤に、クエン酸を仕上げ材に使ったナチュラルおせんたくの魅力と、具体的なやり方を紹介しています。
「なんとなくやさしいイメージ」というだけでナチュラルおせんたくをするのではなく、洗濯物の汚れの性質を化学の目で見て、論理的な思考に基づいた洗濯を提案している点が特徴です。
なるほどと思ったのは、洗濯物の量(重さ)で洗剤量を決めるのではなく、皮脂量で判断すること。ステーキをのせたお皿を洗うのと、苺をのせたお皿を洗うのでは洗剤量が違うのと同じです。
皮脂汚れを落とすポイント
・家族の中でもっとも皮脂量が多い人に合わせて洗剤量を決める。
『ナチュラルおせんたく大全』p.68より引用
・運動部男子がいたら、洗剤は最大量。
・お湯(40~50℃)を使う。
冬の衣類は厚手で重くても皮脂や汗は少ないから洗剤は少なくてOK。逆に、夏の衣類は薄手で軽くても、皮脂も汗もたっぷりです。こうした部分を無視して単に洗濯物の量で洗剤量を決めるのではなく、「ちゃんと考えて判断しましょう」と提案をしてくれています。
仕上げにクエン酸を入れて石けんカスを予防
クエン酸は柔軟剤ポケットに入れて、洗濯の仕上げに使います。というと「柔軟剤のかわりですね」と聞かれますが、違います。ふんわり仕上げるのは石けんの力であって、クエン酸は無関係。2回目のすすぎ時に使うのは、アルカリ洗剤で落とせなかった汚れを落とすためです。
『ナチュラルおせんたく大全』p.63より引用
石けんは環境にやさしい天然の界面活性剤で、皮脂汚れを水に溶かし出します。グリセリンの力で繊維がふんわり仕上がり、柔軟剤も要りません。
しかし、冷たい水だと溶け残ってしまったり、酸の力が強いとあぶらに戻ってしまったりするので、仕上げにクエン酸ですすいで、洗剤成分を無くすわけです。さらに、クエン酸を使うことで、アンモニア臭、魚やタバコのにおいも中和できます。
【感想】石けん洗濯で失敗したくない人におすすめ
『ナチュラルおせんたく大全は』は、「なるほど、そういう理屈だったのか!」という気づきが多く、過去に石けん洗濯を試してうまくいかなかった人や、これから石けん洗濯を始めたいけれど失敗したくない人に特におすすめです。
おしゃれ着洗いやしみ抜きの方法など、上級編の内容もかなり充実しているので、一家に一冊置いて、迷ったときに開くようにすると参考になるでしょう。
ナチュラルおせんたくで本当に清潔な衣類、無臭に洗い上がった洗濯物を体感したい人は、ぜひ読んでみてください。自信を持って、きれいな服を着た人になれますよ。
もくじの紹介
書籍より目次を転載します。全223ページ(紙の場合)のボリュームたっぷりの本です。
- はじめに
- ナチュラルおせんたく 基礎知識編
(汚れとは?、洗濯機の誤解、ナチュラル洗剤、洗剤と水の量、合成洗剤…) - ナチュラルおせんたく 実践編
(基本編、ドラム式編、お湯とり編、成功のコツ…) - ナチュラルおせんたく 上級編
(繊維の特性、おしゃれ着洗いの鉄則、シミ抜きの鉄則、スペシャルケア…) - おわりに
- ナチュラルおせんたく 目安の洗剤リスト