アルカリ電解水は乾いてしまえば何も残らないから安心というのが本当か、実験して確かめてみました。結論として、アルカリ電解水は拭き取ったあとに多少のアルカリ成分は残るが、気にするほどではないことがわかりました。
「乾いてしまえば何も残らない」は本当?
「アルカリ電解水はただの水だから、乾いてしまえば何も残らない」
アルカリ電解水について調べていくと、こんな感じの記述をよく見ます。
「扱うときは手袋をしましょう」「目に入らないように気を付けましょう」とさんざん注意しているのに、乾いたとたんに「何も残らないから安全」というのが、どうも納得できませんでした。
そこで、アルカリ電解水が乾いたあとには本当に何も残らないのかを実験してみました。
先に結論を言うと「拭き取ったあとに多少のアルカリ成分は残るが、気にするほどではない」ということがわかりました。これから、なぜそういう結果になったのかを詳しく見ていきますね。
調べて分かったアルカリ電解水のこと
まず、本やネットでアルカリ電解水について調べました。
水から作られたアルカリ性の液体である
アルカリ電解水は水を電気分解して作られたものです。
商品によって異なりますが、pH11~13のアルカリ性の液体です。
セスキ炭酸ソーダがpH9.8、過炭酸ナトリウムがpH10~11 なので、けっこう強めのアルカリです。
水100%ではない
アルカリ電解水は水を電気分解して作るのですが、電気分解しやすいように補助剤として、「塩化ナトリウム」または「炭酸カリウム」を水に加えます。
塩化ナトリウムは「食塩」、炭酸カリウムは麺をつくる時にいれる「かんすい」のことで、どちらも安全なものです。
塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を電気分解すると、マイナス側にOH–が増え、水酸化ナトリウム(NaOH)が溶けているのと同じような状態になります。
また、炭酸カリウム(K2CO3)を使った場合は、水酸化カリウム(KOH)が含まれている状態になります。
水酸化ナトリウムも水酸化カリウムも、含有率は0.1~0.2%なので、アルカリ電解水は100%水ではなく、わずかに別の物質が含まれていることになります。
空気に触れると安全な物質に変化する
NaOH+CO2→NaHCO3
NaOH+NaHCO3 → Na2CO3+H2O
※水酸化ナトリウムと二酸化炭素から炭酸ナトリウムと水ができる
KOH+CO2→K2CO3+H2O
※水酸化カリウムと二酸化炭素から炭酸カリウムと水ができる
炭酸ナトリウムも炭酸カリウムも食品添加物として使われる安全な物質です。
調べた結論:理論上は安全
調べた結論としては、拭き取ったあと、多少のアルカリ成分が残っていたとしても、空気中の二酸化炭素と反応して、食品添加物レベルの安全な物質に変化するということです。
時間がたてば安全なのはわかりました。
「乾いてすぐ」は安全なのか?
赤ちゃんのおもちゃの拭き取りに使う場合、拭いてすぐに赤ちゃんが舐めてしまうという状況が起こらないとは限りません。
「乾いてしまえば大丈夫」と言われていますが、水が蒸発したあと、そこには溶けていた成分が残っているはずです。
時間とともに無害な成分になるとはいえ、すぐに濡れてしまうと、その成分が水に溶けて元の水酸化ナトリウム水溶液に戻ってしまわないかが心配でした。
水酸化ナトリウム自体は安全なのか
水酸化ナトリウムは、5%を超える水溶液が劇物扱いされる物質です。
タンパク質を溶かす性質があるので、皮膚も溶かしてしまいます。
「水酸化ナトリウムは皮膚をとかしてしまう危ないもの」というイメージがあったのですが、調べてみると、低濃度(0.5%未満)ならそこまで問題ないようです。
適切な濃度で管理された状態(例えば、極めて低濃度での家庭用洗浄剤など)で使用されるが、低濃度(0.5%未満の水溶液)では、腐食性はなく、刺激性もほとんど無い。
引用元:カネカ株式会社 GPS/JIPS 安全性要約書
アルカリ電解水の水酸化ナトリウム濃度は0.1~0.2%程度なので、そのまま残っていても大丈夫でしょう。
でも、濡れた手で触ることによってpH11~13の水酸化ナトリウム水溶液に戻ったりしてしまうと、素手で触ると手がぬるぬるする(皮膚が溶ける)可能性があります。
成分的には問題なくても、アルカリ度が高いとちょっと怖いので、「アルカリ電解水が乾いてすぐに濡れたら、pHはどのくらいになるのか」を調べてみました。
それが次の実験です。
アルカリ電解水が乾いた直後のpHを調べてみた
ダイソーでお手軽に手に入る、こちらのアルカリ電解水で実験。
乾いたアルカリ電解水はどうなるのかを実験してみました
乾いた状態ではpHが測れないので、濡れた状態にします。(濡れた手で触ったのと同じような状態にする)
pH試験紙を使って、スポイトでたらした水のpHを測ります。元は黄色い紙ですが、一部が青くなりました。時間とともに、だんだん色が変わっていきます。
最終的には、pH8くらいでした。
これと同じように、水道水・アルカリ電解水の原液のpHも測定しました。
pH試験紙では正確な値は測れませんが、おおまかなpHは以下のとおり。
- 水道水…pH7
- 拭き取ったアルカリ電解水…pH8
- アルカリ電解水の原液…pH12
明らかに水道水よりもpHが高いので、乾いても多少のアルカリ成分は残っていることがわかります。
とはいえ、水道水のpHの基準は5.8~8.6(水道法による)なので、pH8は心配するほどの数値ではありません。
「アルカリ電解水は拭き取ったあとに多少のアルカリ成分は残るが、気にするほどではない」というのが、今回の実験の結論です。
今回は拭き取ったあとに少し水気が残るくらいだったので、水気がなくなるまでしっかり拭き取ってしまえば、残るアルカリ成分はもっと少なくなるでしょう。
基本的に二度拭きなしで大丈夫ですが、赤ちゃんやペットがいて心配な方は、水で二度拭きしてくださいね。