暮らしまわりを紹介する人気ムック『暮らしのおへそ』の編集ディレクターである一田憲子さんの著書『大人の片づけ できることだけやればいい』は、心と住まいの整理術をまとめた本です。
一田家の片づけ術(台所編・リビング編・クローゼット編・書斎編)や時間の整理術、人生後半のものの持ち方について、語りかけるような文章で書かれています。
”人生後半の片づけは、 “完璧”をゴールに設定しないこと”。年齢を重ねた人にこそ響く内容です。
【要約】大人の片づけ できることだけやればいい
この本は、「ずっと片づけが嫌いで、出したものを元の場所に戻すのも面倒くさいし、引き出しの中をこまごま整理するのも苦手」だった一田さんが、「できないこと」は諦めて、「できること」だけを続けていったら、いつの間にか部屋がすっきり整うようになった経験をベースに書かれた本です。
一田さんは、人生後半に差し掛かり、まずは自分の性格を認めることから始め、性格を変えようとするのではなく、自分の性格のまま続けられる収納方法を考えるようになったといいます。
「できないことができるようになりたい」「もっと成長・前進したい!」そういう気持ちも素敵ですが、いろいろな経験を重ねてきた人であれば、よい意味で「あきらめる」ことが心地よく暮らすポイントかもしれません。
たとえば、以下のような内容は本書を象徴する考え方といえそうです。
- 生涯これでいい、という鍋を決める
- ものが多くても、片づいた風に見せるテク
- 「かっこよさ」より「わかりやすさ」を優先した収納に
- 暮らしをリセットし、ごちゃつきに気づく目を持つ
- 「出口」のある暮らしを組み立てる
- 未来への不安を手放せば、ものを減らせる
本書には、人生後半の片づけは、 “完璧”をゴールに設定しないことが大事と書かれています。
できないことはあきらめ、できることだけを大切にして、すっきりと暮らすにはどうすればいいのか? 基本となる考え方から具体的な方法まで、真似したくなるポイントがたくさんです。
無理なく続けられることを見つける
この本には「自分を無理に変えよう」「できないことをできるようになろう」といった内容は書かれていません。いまの自分のまま、無理なく続けられることを見つけるのが「大人の片付け」です。
片づくための「習慣」を手に入れる
片づけは「絶対にやらなきゃいけないこと」ではなく、つい後回しにしがちです。そんな片づけを定着させるためには、「一生懸命」片づけるのではなく、「当たり前に」続けるためのしくみをつくることが大事。
たとえば、仕事から帰ると、ついかばんをそこらに置きっぱなしに。出かけなければ、数日前に使ったバッグが、ずっとリビングの床に転がったまんまです。そんな「バッグ問題」をなんとかしたいと、クローゼットのポールに「無印良品」の大きめフックをひっかけて、よく使うバッグを吊るしてしまうスタイルにしました。これだと、家に帰ってバッグから財布や手帳やペンケースを出したら、バッグをヒョイとひっかければOK。(中略)
この一連の流れには、一点の「面倒臭さ」もないので、体が自然に動くようになりました。
『大人の片づけ できることだけやればいい』p.23~24より引用
気合や根性など、人の意志の力を前提とした片づけにはエネルギーが要ります。また、人は面倒くさいことを続けられません。
がんばらなくても自然とできる(元の場所に戻せる)しくみをつくれば、習慣が定着します。どういうふうにすれば自分が無理なく続けられるのかを考えてみるとよさそうです。
バッグを吊るす収納は、カジコレでも以下の記事で紹介しています。
冷蔵庫整理は買い物サイクルがポイント
一田さんは、以前はその日食べたいものをその日に決め、仕事帰りにスーパーに立ち寄って買うスタイルだったそうです。しかし、コロナ禍で買い物が週に1~2回になり、暮らしの中に「使い切ってから買う」サイクルができ、冷蔵庫整理がラクになったといいます。
どっさり入ったものを整理しようとすると、時間もスキルも几帳面さも必要です。そのどれもがない! というなら、「買い物の回数を減らす」という、別のアプローチから入ればいい。この経験は、自分が苦手な「整理整頓」はさっさと手放して、「管理する量を減らす」というできることを見つける大切さを教えてくれました。買い物に行けないという状況がなかったら、私はこのことに気づかなかったと思います。
片づけがどうしてもうまくいかない場合、ものの「出口」と「入り口」をチェックすることが有効。偶然知ったこのセオリーを、他の場所での整理整頓にも応用してみようと思っています。
『大人の片づけ できることだけやればいい』p.75より引用
「面倒くさがりだから/大雑把な性格だから、整理整頓ができない」と思っている人は多いでしょう。
でも、性格を変える必要はありません。というより、簡単に性格は変えられませんよね。しかし、いまの自分=整理整頓が苦手な自分のままで、管理する量を減らすことなら、できそうではありませんか?
本書には、メンタルブロックを外して、視点を変え、「自分が無理なくできるやり方」を見つけるヒントがたくさんちりばめられています。
【編集部の感想】大人の片づけは自分を知ることから
背伸びをするのではなく、「できないこと」はあきらめて「できること」だけをやればいい。その代わり「できること」は心を込めて大切にする……。そんな一田さんの文章を読んでいると、「これなら私にもできそう」と思えてきます。
一田さんは、「出口」のある暮らしを組み立てることを提案していますが、「買わない」「持たない」のミニマリストではありません。「第4章 人生後半のものの持ち方」には、暮らしのスリム化の真っ最中ではあるけれど、誰かに会うためにワンピースを買うワクワクは残しておきたい、と綴られています。
本当に欲しいものを手に入れる喜びを知っていること。不要なものは持たない潔さ。その両方のさじ加減を自分で調整することが、「大人の片づけ」の目指すところ。片づけのことを考えると、つい「ものを増やさないようにしよう!」と分別のある大人の顔をしがちですが、何歳になっても、大いにお買い物を楽しめる自分でいたい。自分でも知らない間にものがどっさり増えてしまうという取り留めのない物欲と、未知なる自分との出会いを導いてくれそうな本物の物欲を見極められるようになりたいと思います。
『大人の片づけ できることだけやればいい』p.185より引用
大人の片づけには、無理は不要です。自分にちゃんと向き合い、できることとできないこと、欲しいものと要らないものを区別できたら、自分にとっての「これでいい」が見つかるのではないでしょうか。
もくじの紹介
『大人の片づけ できることだけやればいい』のもくじをAmazonから引用します。
- 1章 なぜ片づけるのかを考える
・片づくための「習慣」を手にいれる
・夫の片づけには口も手も出さない
・片づけは、「時間」と「スペース」と「気力」のかけ算 - 2章 一田家の片づけ術
台所編
・生涯これでいい、という鍋を決める
・冷蔵庫整理は、買い物サイクルがポイント
リビング編
・「かっこよさ」より「わかりやすさ」を優先した収納に
クローゼット編
・ずっと変わらない定番なんてない
・靴下の捨てどきを決める
書斎編
・苦手でもITの知識はあったほうがいい
・増え続ける名刺や領収書は、とりあえず置き場をつくる - 3章 疲れない時間の整理術
・時間管理のスキルより、体調管理が大事
・テレビに思考を乗っ取られない
・「後まわし力」を磨く - 4章 人生後半のものの持ち方
・お金の不安は、現状を「見る」ことから
・一周回って、自分の目で選ぶ
・人と人との関係を片づける…