「断捨離」=「モノを捨てる片づけ術」と考えている人も多いと思いますが、片づいてすっきりするのは、断捨離パワーの一部にすぎません。
断捨離とは、「出す」「入れる」を繰り返しながらモノ・空間・自分自身を洗練させていく美学のこと。
やましたひでこさんの『人生を変える断捨離』は、断捨離の基本を改めて確認しつつ、究極の目的である人生のスパイラルアップの方法を紹介する集大成ともいえる一冊です。
【要約】人生を変える断捨離
『人生を変える断捨離』は一般的な片づけ本・整理収納本とは一線を画しており、「これはこう片づけるといいですよ」「こんな収納術がありますよ」といった具体的な片付け指南は書かれていません。
その代わりに書かれているのは、あふれるモノや、自分自身の執着や不安との向き合い方です。
”モノを「断」ち、ガラクタを「捨」てれば、執着も「離」れていく”が断捨離の基本ですが、その本質は「出す」ことにあり、断捨離とは「出す」美学である、とやましたひでこさんは言います。
この本は、単なるモノの片づけにとどまらず、停滞しているモノや感情と向き合って、「出す」「入る」という流れを取り戻し、”人生の新陳代謝”を向上させることで、ごきげんに生きる方法を提唱しています。
ごきげんに生きることにつながる「断捨離」の本質
本書は、捨てられない理由に向き合い、断捨離のメカニズムを解説し、人生を変えてごきげんに生きる方法を提唱しています。本質的な部分を理解するためには最初から最後まで通して読むことがおすすめですが、本書のエッセンスが伝わりそうな部分を一部紹介します。
クローゼットや食器棚や冷蔵庫に詰まっている不要なモノ、生活空間に乱雑に堆積しているガラクタとは、自分にとって不要な観念や、自分を責めたり否定したりするマイナスの思考・感情の証拠品でもあります。ですから、そういったモノを手放すことは、自分自身を、自分の人生を開放することに繋がります。
その結果、私たちは、「高い視点・広い視野・深い洞察」、つまり俯瞰的な思考を獲得することができます。本当の意味で、「自在=あるがままでいられて自然」な状態で生きられるのです。そして、そこには”ごきげん”なあなたがきっといるはず。
『人生を変える断捨離』p.3より引用
やましたひでこさんは、断捨離が目指すのはこうした「ごきげんな生き方」だと言います。
最初は「単に部屋が散らかっているだけなのに、そんな哲学的なことを言われても……」と思うかもしれません。しかし、メンタルが崩れるのに比例して部屋が散らかっていくことや、机の上を片づけると仕事や勉強に意欲的になれることを、経験的に知っている人もいるのではないでしょうか。
私たちが自覚している以上に、部屋と心の状態はリンクしているのだと思います。
池に住む私たちは、「消費社会」という大きな川の流れからモノを取り入れています。ところが、池の入り口で機能すべき「断」のバルブは緩んだままなのに、出口で機能すべき「捨」のバルブは、「もったいない」「面倒くさい」「いつか使うかも」の意識が邪魔をして、開かないままなのです。
『人生を変える断捨離』p.20より引用
やましたひでこさんは、モノが溢れた社会の中で「片づかない」と嘆きながら暮らしている人たちを、「ヘドロだらけの溜め池で動けないナマズ」にたとえています。正直、とても耳が痛い言葉です。
「ヘドロだらけの溜め池」というと大げさに聞こえますが、溢れるモノに囲まれた窮屈で不便な状態は、それと大差ありません。詰まって滞っている状態を「当たり前」に思うのではなく、適切に「出す」と「入る」を繰り返すことで、部屋も心もすっきりし、軽やかに生きられるようになるのです。
見て見ぬふりをしてきたことに向き合うのは、最初はエネルギーが要ります。しかし、、その先に”ごきげんな毎日”が待っていると思えば、やってみる価値があるのではないでしょうか。
【感想】閉塞感から解放され、新陳代謝する暮らしへ
この本は、シンプルライフを提案しているわけでも、収納術を教えてくれるわけでもありません。しかし、読み終わる頃には”モノに対する価値観”が変わり、人生を変える行動を起こしたくなっているでしょう。
私たちは皆「モノが勝手に入ってくる社会」に生きていて、根深い「モノ軸」の思考を引きずっていると著者は述べています。「もったいないから/いつか使うかもしれないから、捨てずに取っておく」のは、モノに対する固着といえるでしょう。
自分の中にそういう執着や不安があることを認め、解き放つことができれば、暮らしは変わります。
家の中も心の中も閉塞感でいっぱいで、イライラや鬱屈した気持ちを抱えている人は、ぜひ本書を読んでみてください。思ってもみなかった、人生を変えるヒントが見つかるかもしれません。
もくじの紹介
『人生を変える断捨離』のもくじを引用します。
- 1章 だから、あなたは捨てられない
- 2章 これが断捨離のメカニズム
- 3章 断捨離が人生を変える
- 4章 断捨離で「ごきげん」に生きる