借金玉さんの『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』は、発達障害のある方(グレーゾーンの人を含む)が、 「あたりまえ」がやれないという問題を抱えながらも、どうにか働き、食べていくための「生活術」をまとめた本です。
「生活」と「家事」は密接に関わり合っています。めんどうくさいことは(こと発達障害の人には)続けられないので、きちんと生活するためには、できるだけ快適に、ラクできるようにするのが重要です。
「片づけられない」「マルチタスクが無理」と悩んでいる人にはきっと役立つ本でしょう。
【要約】発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47
本書は、発達障害者(グレーゾーンを含む)の困りごとを解決する47のコツが書かれた本です。
どれも著者自身が34年間の「どん底人生」から試行錯誤の末に手に入れたメソッドなので、よくある家事本のように「それができたら苦労しないんだってば」がなく、「それなら自分にもできそう!」と思えるものばかりです。
「サバイバルガイド」とタイトルにありますが、著者は、サバイバルとはよりラクに、より快適に、より優雅に生きられる環境を自らつくり上げていくことと定義しています。
「きちんと生活をしよう」は「快適な生活をしよう」と同義でなければいけないと僕は思います。しかし、なぜか人は「不便で快適でない生活」を志向してしまうところがあります。
「自分はまともな生活ができていない」と感じている人ほど、まるで自分には快適な生活をする権利はないとでもいうようなある種の自罰性 ー贅沢は敵だ!ーを持っているように僕は思えてならないのです。この本は、そういった方向を一切目指しません。
『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』p.11より引用
本書では、生活環境、お金、習慣、在宅ワーク、服、食事、休息、うつの8つのチャプターで全47のライフハックを紹介しています。
すべてが家事に関するものではありませんが、生活をよりラクにより快適にする方法が満載です。「あたりまえのことができない」と感じていて、「なんとか生活を立て直したい」と考えている人にぜひ読んでほしい本と言えます。
カジコレ編集部が高く評価したハックはコレ!
食洗機が「先延ばし人生」を解決する
食洗機で「悪い思考ルーチン」を断ち切る
食洗機、持っていますか? 今すぐ買ってください、以上。これが本書の最初に伝えたいメッセージです。
「ラクをする」のは意外と難しいことです。普段我々は、自分が「めんどくさいことをしている」という感覚をあまり持つことができません。「自分が怠惰だからこんなことになるのだ」と自罰感情は湧いても、「どうすればラクになるかな?」という工夫の方向性へ思考が向かわないのです。
この悪い思考ルーチンを解除するには、一度「設備投資をしてみたら劇的にラクになった」という体験をしてみるしかありません。いくら字面で理解できても、実感が伴っていなければ無意味なのです。
僕の経験上、即座にこの劇的な体験をさせてくれる道具が、食洗機です。
『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』p.25より引用
「食洗機がなくても、皿は手で洗えば済む」。それは確かにそうです。でも、それにはずっと努力が付きまといます。過去の人々が洗濯板で服を洗う生活から、洗濯機のある生活に移行したのは、手で洗うのが面倒くさかったからにほかなりません。
食洗機があれば、毎日あなたががんばる必要がなくなり、ラクで快適な生活が手に入ります。
買うべきは、仕事を手助けする道具ではなく、仕事を任せられる道具である、という著者の意見は、家事を減らす提案をしているカジコレ編集部スタッフも100%同意します。
仕事を任せられる道具(食洗器、ドラム式洗濯乾燥機、ロボット掃除機など)を導入すれば、自分の時間が生まれます!
本書では食洗機について述べていますが、ドラム式洗濯乾燥機も「設備投資をしてみたら劇的にラクになった」という体験ができる家電です。
「決断疲れ」には週1カレーが効きます
決断で「へとへと」になっていないか
生活は、果てしなく続く決断の連続です。毎日着る服から食べる食事、限られた時間で何をするか、そういったことを逐一決めていく必要があります。決定の連続は間違いなくあなたを消耗させているのです。
僕はうつがひどくなると、この意思決定リソースが枯渇してスーパーで総菜を選ぶことすらできなくなってしまいます。笑われそうな話ですが、「晩飯が決められない」とスーパーの総菜コーナーで涙ぐんでしまった経験が僕にはあります。
(中略)
僕が実践しているのは、週1、月1のルーチンを決めるというもの。具体的には、
『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』p.106~107より引用
・毎週、金曜日にはカレーを食べる
・毎月、第一日曜日には野外に遊びに行く
これは「習慣」に関するライフハックですが、ルーチンを決めて決断疲れをなくし、生活にリズムを作ることは、「買い物」や「料理」はもちろん、それ以外の家事についても参考になります。
「時短」はわかりやすい家事効率化ですが、「ムダな決断コストをできるだけ減らし、考えなくても生活がまわっていくしくみ」を作ることも間違いなく家事の負担を減らしてくれます。
【感想】あたりまえができない人のための生活立て直し本
本書には、上で紹介したハックのほかにも
- 「たたむ」「収納する」これは悪い文化です
- レシピは「メタ化」すると無限に応用できる
- 料理の効率は「熱源」の数で決まる
…などの「おしゃれ以前の身だしなみハック」や「ずぼら完全対応自炊ハック」が載っています。
発達障害者やグレーゾーンの人に向けた本なので、メンタルの保ち方やずぶずぶ沈み込んでしまったときの対応方法なども載っているので、「自分ももしかしたらそうなのかもしれないな」と感じている人はぜひ読んでみてください。
『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』は、普通の家事本ではどうにも生活改善ができなかった人、生活を立て直したいけれどどうしたらよいかわからない人におすすめの一冊です。
Amazonで1,780件を超える評価が付き、星5つ中の4.2という高い評価を得ているのも納得です。
もくじの紹介
『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』のもくじは以下の通りです。
- CHAPTER1 生活環境――サバイバルに絶対必須の設備ハック
- CHAPTER2 お金――貧困と借金から学んだマネーハック
- CHAPTER3 習慣――くりかえしが苦手な僕らの365日ハック
- CHAPTER4 在宅ワーク――だらだらに勝つ自宅作業ハック
- CHAPTER5 服――おしゃれとか以前の身だしなみハック
- CHAPTER6 食事――ずぼら完全対応版自炊ハック
- CHAPTER7 休息――生き延びるための休日ハック
- CHAPTER8 うつ――不安とともに生きる再起ハック