ナチュラルクリーニング講師・本橋ひろえさんの著書『ナチュラルおそうじ大全』は、重曹・クエン酸・過炭酸ナトリウム・アルコール・石けんの5種類の洗剤だけで、家じゅうのほとんどの汚れを落とすナチュラルクリーニングのやり方を紹介する本です。
「合成洗剤を使わないナュラルクリーニングを実践したい」
「最小限の手間で、最大限の結果が出る方法を知りたい」
そんな人には、化学的なアプローチに基づいて掃除をラクにする方法が満載の本書をおすすめします。
【要約】ナチュラルおそうじ大全
『ナチュラルおそうじ大全』では、重曹・クエン酸・過炭酸ナトリウム・アルコール・石けんの5種類を使ったナチュラルクリーニングの魅力と、具体的なやり方を紹介しています。
著者の本橋ひろえさんさんは、大学時代に化学を専攻し、卒業後は化学薬品を作る会社で合成洗剤の製造を担当していたとのこと。ナチュラルクリーニングとは真逆なイメージで、意外ですよね。
しかし、合成洗剤の成分や作り方を知るほどに、市販の洗剤はどれも似たような成分で、風呂用、トイレ用、台所用、ガラス用、カビ除去用、フローリング用、洗濯用……とたくさんの種類の洗剤を買いそろえることに疑問を持つようになったそうです。
そして、たどり着いたのが、重曹、クエン酸、過炭酸ナトリウム、アルコール、そして石けんの5つだけで家じゅうを掃除するナチュラルクリーニング。
場所別、洗うもの別に色とりどりの洗剤ボトルをそろえなくても、汚れの性質を知り、汚れに合わせて洗剤を使うことでおもしろいほど簡単に汚れが落ちます。
ナチュラルクリーニングで使う洗剤は、合成洗剤のように入念にすすいだり、何度も水拭きをしたりする必要がないものがほとんど。すすぎがラクになることは、掃除がラクなことに直結します。
本書の構成は以下の通り。
- Part1 「汚れ」って何? 実は知らない掃除の原理
- Part2 用意するのは洗剤5つだけ ナチュラルクリーニングを始めよう
- Part3 洗剤が減らせる! ラクちんキレイな掃除のコツ
- Part4 キッチン掃除の達人になる!
- Part5 浴室&洗面所、カビ知らず
- Part6 トイレと玄関から福を呼び込め
- Part7 リビングと寝室を、ここちよく
Part1の「汚れ」って何? 実は知らない掃除の原理では、場所別に洗剤を選ぶと掃除が大変なので、汚れの種類別に洗剤を使うことを提案しています。
汚れの種類は大きく分けて「ホコリ・チリ」「アブラ汚れ」「水アカ」「カビ・菌汚れ」の4つ。それぞれ、正体はなにか、放置するとどうなるか、対処法は……と説明されています。
汚れの性質で洗剤を選ぶとおもしろいようにキレイになる「汚れ落ちの秘密」は、少しだけ難しめですが、読むと納得でき、実践したくなる内容ばかりです。
「ナチュラルクリーニングって、肌にも地球環境にも良さそうだけど、それでも合成洗剤のほうが便利で、掃除をラクにしてくれるんじゃないの?」
こんなふうに思っている人は少なくないかもしれません。しかし、本橋さんは「強力な洗剤こそが掃除を大変にしている原因に思える」と本書で述べています。
ほんの少量で汚れが落ちる合成洗剤は、言い換えれば、どんなに薄めても洗剤の力が持続するわけで、たくさんすすぎ、何度も拭き取らないと、洗剤の力が残ったままになってしまうからです。
「ナチュラル」「自然派」「やさしい」そういったナチュラルクリーニングのイメージではなく、掃除がラクになるのであればナチュラルクリーニングを選びたい人、最小限の手間で最大限の結果を出す方法が知りたい人におすすめの一冊です。
掃除をラクにするさまざまな秘密と具体的な方法がまとまっていますよ。
掃除をラクにするためのナチュラルクリーニング
『ナチュラルおそうじ大全』では、「地球環境にも手肌にもやさしいから、合成洗剤より手間はかかるけれど、ナチュラルクリーニングをしましょう」という論調ではなく、一貫して「掃除がラクになるからナチュラルクリーニングをしましょう」と書かれています。
「ナチュラルクリーニングは汚れが落ちにくい」そんな思い込みを取り払ってくれます。
汚れ落ちの秘密1
酸とアルカリが中和すると汚れがゆるんで落ちやすくなる大まかに説明すると
・酸とアルカリがまじりあうと、中和して汚れがゆるむ。
・中和してゆるんだ汚れはスルリと落ちる。(中略)
……酸性の汚れにアルカリ性洗剤を、アルカリ性汚れに酸性洗剤をかけると、たちまち中和して、サラリと扱いやすくなるのです。
『ナチュラルおそうじ大全』p.34~35より引用
敵(汚れ)の性質を知り、それに合ったアプローチをすることがいちばんラクな掃除方法である、と書かれています。化学を専攻し、化学薬品を作る会社で働いていた本橋さんらしい内容です。
汚れ落ちの秘密2
界面活性剤の力でアブラを水にとかして洗い流す便利だけど注意
・泡が立つ洗剤は界面活性剤。
・ナチュラル洗剤である石けんも、界面活性剤。
・合成洗剤=合成界面活性剤。残りやすく、すすぎが大変。(中略)
現在市販されている多くの合成洗剤に含まれているのは化学的に合成された界面活性剤で、原料は油脂。完全に洗い流さないとカビ・雑菌のエサになるので、水で流せる場所でしか使えません。
『ナチュラルおそうじ大全』p.36~37より引用
中和させて汚れを落とす方法のほか、界面活性剤の力を利用する洗剤もあります(石けんなど)。
界面活性剤は本来は混ざり合わない水とアブラの境目(界面)に入り込み、界面を壊してまじりあわせる力があります。食器についた油汚れに水をかけてもはじかれるのに、洗剤をかけると、油が水にとけて(乳化して)流れていくのはこのためです。
「アブラを包んで洗い流してくれるなら、問題ないのでは?」と思うかもしれませんが、しっかり丁寧にすすがないと、残った界面活性剤(油脂)がカビや雑菌のエサになってしまいます。
掃除をしたのに、それが未来の汚れを育てる原因になってしまうのだとしたら、本末転倒です。
本橋さんは「掃除をラクにするコツはすすぎがラクになる洗剤を使うこと」という考えに基づき、とにかく掃除をラクにしたいならナチュラルクリーニングが良いと述べています。
汚れに合わせて使うから手早くきれいになる、手肌に触れても安心、すすぎがラク…。ナチュラル洗剤のこうした部分に魅力を感じ、ナチュラル掃除を始めたいと考えている人に役立つ本です。
【感想】手もとに置いて活用したいおそうじ大全
『ナチュラルおそうじ大全』は、イメージ先行型の「なんちゃってナチュラル」とは一線を画する、とてもロジカル(論理的)な内容です。
安心・安全なことや、地球環境にやさしいことももちろん魅力ですが、いちばん大切なのは「毎日の掃除がラクになること」! そのコンセプトが最初から最後まで貫かれています。
敵(汚れ)を知り、それに合わせたアプローチをするには、知識を身につけなくてはなりません。化学が苦手な人にとっては、少しとっつきにくく感じてしまう部分でもあるでしょう。
でも、この本でナチュラルクリーニングの根幹となる考え方をインストールし、あとはその都度、辞典のようにこの本を使って、ノウハウを真似していけばOK。すべてを覚える必要はありません。
短時間で効率よく掃除をする方法は、掃除がキライな、忙しい人にこそ向いていると言えます。
『ナチュラルおそうじ大全』は全221ページの大ボリューム。イラストも豊富で、わかりやすいです。読むというより、手もとにおいてフル活用したい一冊です。
もくじの紹介
書籍より目次を転載します。全221ページ(紙の場合)のボリュームたっぷりの本です。
- Part1 「汚れ」って何? 実は知らない掃除の原理
- Part2 用意するのは洗剤5つだけ ナチュラルクリーニングを始めよう
- Part3 洗剤が減らせる! ラクちんキレイな掃除のコツ
- Part4 キッチン掃除の達人になる!
- Part5 浴室&洗面所、カビ知らず
- Part6 トイレと玄関から福を呼び込め
- Part7 リビングと寝室を、ここちよく